解体工事は専門業者に依頼しないと対処できないと考える方は多いですが、きちんと条件さえ揃えれば自分で対処することも可能です。では、その条件とは何なのでしょうか。詳しく解説します。
結論からいうと、個人で所有している住宅であり、費用の負担、必要な手続きの対応、道具・車両の準備さえできれば自力で解体を行うことはできます。
木造二階建てを例に大まかな工程を説明すると、
1:足場設置・養生
高所での作業になるので足場を組み、防塵・防音を目的に建物全体に養生を施します。
2:残置物の撤去
ブロック塀、ガラスや石膏ボードなどの建設資材を取り外して撤去、内部に残された家具や不要な品(残置物)を処分します。
3:解体着手
重機を使って基礎部分を含む家本体の解体を行います。
4:整地
解体作業によって発生した木材・コンクリートガラなどの廃材を撤去して地面を整地します。
建物の種類や規模、周辺の状況によって異なりますが、専門業者は上記の4工程をおおよそ一週間程度で行います。
解体工事を行うために用意すべきなのは物品だけではありません。
家の解体は基本的にユンボ・圧砕機などの重機を用いて行います。これらはレンタル・リースすることになると思いますが、重機の取り扱いには専門資格が必要になるため、レンタル前にご自身で取得するよりもオペレーター込みで発注できるレンタル・リース業者を探すのがおすすめです。
健康への影響が社会問題となったアスベストは現在建築資材として使用されることはありませんが、築年数が古い建物を解体する場合には事前にアスベスト調査を行ってから作業を行う必要があります。この作業は専門家に依頼して確実に行うようにしてください。
重機や車両を駐車したり、解体で発生した廃棄物を搬出まで一時的に保管しておく場所など、解体作業には広いスペース確保が不可欠です。
まったくの手ぶらの状態から解体着手~処分までを行う場合、重機・搬出車両のレンタルから養生・足場資材の手配、廃棄物の処分費用などの諸経費を含めて安くとも数十万円、高くて数百万円かかることもあります。どんぶり勘定で着手した結果、後から後から必要な費用が発生して相場よりも高くついてしまう場合もあり得るため、建物の種類、立地などをもとに一度計算してみるのがおすすめです。
当然ではありますが、発生した廃棄物をゴミステーションに出すことはできません。解体工事によって発生した廃棄物は産業廃棄物扱いとなり、自治体ではなく排出者、すなわち解体を行った人に処理責任が発生するからです。これらの産業廃棄物は産業廃棄物処分業許可を持った回収業者に回収・処分を依頼する必要があります。
回収業者の中には無許可で回収を行った挙句不法投棄したり(この場合は業者だけでなく、依頼者側も責任を問われます)、専門性を盾に高額な料金請求を行う悪徳業者もいますので、業者選びを慎重に行うだけではなく、繁忙期と被って予約を取れないという状況を避けるためにも早めの予約・手配が必要です。
ご自身で解体工事を行う場合、当然ながら申請も自力で行う必要があります。
解体後のコンクリートや木材は「特定建設資材」と呼ばれており、分別・再資源化が建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)によって義務付けられています。そのため、これらが発生する解体作業が行われる前には工事発注者(自力で行う場合は自主施工主)が工事を始める7日前までにお住まいの都道府県の知事に届出を提出する必要があります。提出書類や提出の方法は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
立地の関係で車両を一般道に停車して作業する場合は、管轄の警察署に出向いて道路使用許可を受けます。これを怠ると工事は中止され、罰金の対象にもなるため、工事の前に忘れずに確認しましょう。
ライフラインとは電気・ガス・電話・インターネットを指します。
供給会社への停止手続きに加え、浄化槽の汲み取りや光ファイバーの撤去などにも状況に合わせて対応する必要があります。
近隣の方々に余計な不安を与えないため、理解と協力を得るためにも解体工事着手前には近隣への挨拶まわりが必須です。詳しい作業内容と作業日時・1日の作業の終了時刻などを伝え、事前に迷惑をかけることのお詫びを込めて行います。
解体作業が終了したら「この番地に存在した建物は解体されてなくなった」ということを登記簿に載せる必要があります。これを解体後1カ月以内に法務省に知らせるための手続きが建物滅失登記です。ご自身で法務局に申請する方法以外にも、土地家屋調査士などの専門家に代理申請を依頼する方法があります。
解体工事という大がかりな作業を自力で行う以上、デメリットを把握して適切な対処法を知っておかなければ大事故を招く可能性もあります。
解体の専門知識を体得し、最大限の注意を払って作業を行っている専門業者のスタッフであっても、ちょっとした油断のせいで思わぬ事故に巻き込まれることもあります。そのため、経験・知識共に乏しい人が解体を行う以上は、事故の可能性を考慮し、あらゆる方面から対策を講じるのが不可欠といえます。
事前調査・説明が不十分で騒音・振動で近隣の方々とトラブルになった場合や、万が一事故が起こって近隣の敷地に損害を与えたり、怪我をさせたりした場合の損害賠償も自分で行う必要があります。しかし、賠償できるものならまだマシで、責任を負えないような事故の当事者になる場合も起こり得ることも考えておく必要があります。
費用削減を狙って自力での解体を目指す方も多いですが、道具代や車両レンタルなどの諸々の費用をまとめたら結局高くついたというケースや、解体途中で行き詰まって途中で解体業者に依頼した結果、倒壊を避ける目的で作業工程が増えて料金が高額になったなど、費用を惜しんだ結果、結局高額の支払いをする必要に駆られるというケースは非常に多いです。
このように、自力で解体工事を行う際には多くのデメリットがあることを把握したうえで、その全てを自己責任として行う必要があります。
少なくともゼロから知識を仕入れて準備に取り掛かる……という段階であれば取り返しのつかない事態が発生する前に専門家に依頼したほうが確実な場合もあります。
確実さ・安全性で考えるなら、自信があったとしても付け焼刃の知識で解体に踏み入るよりは安全性・確実さの面でも専門業者に依頼するのが無難といえます。事前準備の養生・足場設置を行うだけでも知識だけではなく実際の経験がなければ対処しにくいものですし、申請も不備があれば罰金を科せられる恐れがあるなど、自分で対応するには不安な点をまるごとプロに任せられるのが最大のメリットといえます。
業者に依頼するメリットは他にもあり、手続きの代行・残置物の回収などの作業面はもちろん、作業全てを含めた見積もりを受けられることで予算の見通しが立てられ、着手後に必要な作業に気付いて追加していった結果大幅に予算オーバーするようなケースも防止できます。まずはお近くの解体業者数件から見積もりを取り、自分が行う場合の予算・労力を比較してみてはいかがでしょうか。
解体工事は自力で行うことも可能ですが、事故の危険や近隣の方々とのトラブルを避けるために専門業者に依頼したほうが確実です。どうしても自力で行う必要がある場合には事前準備とリスクヘッジを怠らず、万全の準備を整えてから着手するようにしてください。