近年、少子化による人口減少の影響で空き家率が上昇しています。このコラムをご覧になっている方も、空き家になった実家などの不動産にお悩みかもしれません。そのまま維持管理し続けるのは金銭的にも精神的にも負担が大きいものです。それならと不動産の売却をご検討であれば、できるかぎり高値で売りたいのが心情でしょう。その際、建物の状態によっては解体し更地にしたほうが良い場合もあります。そこで気になるのが解体工事費用です。当コラムでは解体工事費用を安く抑えるためのポイント、工事を行うか決める際に気をつけたいことなどを詳しくご紹介いたします。
まず解体費用の相場はどうやって決まるのかをご説明いたします。その要因は主に「構造」「広さ」「立地」「追加費用」の４つです。
建物の構造が木造、鉄骨造、RC造（鉄筋コンクリート造）のいずれかで解体工事の坪単価の相場が決まっています。解体に、より人数が必要で重機を使わなければいけないような固い建材でできているものほど費用は高くなります。
【構造別相場の目安】
木造 3～5万円/坪
鉄骨造 5～7万円/坪
RC 6～8万円/坪
建物が広いほど解体する面積は増えます。二階建てや地階がある建物はその分、工事費用も高くなります。もし同じ坪数であれば二階建てよりも平屋のほうが費用が高くなる傾向があります。これは建物の基礎や屋根の広さが二階建てのほうが少なくなるからです。
【解体工事費用の目安】
木造 20坪：80～100万円 30坪：120～150万円 40坪：160～200万円
軽量鉄骨造 20坪：120～130万円 30坪：180～200万円 40坪：240～260万円
重量鉄骨造 20坪：130～140万円 30坪：200～210万円 40坪：260～280万円
RC造 20坪：120～160万円 30坪：180～240万円 40坪：240～320万円
住宅密集地で隣の建物と近接している場合、騒音や振動など近隣に迷惑のないよう配慮が必要ですし、作業時間も制限されてしまうかもしれません。狭い土地で重機を使用できないとなると全ての作業を人の手で行わなければならず工期も長くかかります。こうした様々な立地条件によって時間と労力が余計にかかってしまうと解体費用は高くなります。
解体作業の他に追加になる作業がある場合、費用は高くなります。例をいくつかご紹介します。
発がん性物質が含まれていることが分かり、今は使用が禁止されているアスベストですが、1975年以前に建てられた建造物には断熱材として使用されていることがあります。解体工事中にこのアスベストが飛散してしまわないよう法規則で定められた工法で別途作業し、処分しなければいけません。
地下に地中障害物が残っているような場合、それを取り除くために相当のコストがかかります。地下工事は費用の負担が大きいことから、ひと昔前はそのまま埋められていた事例があるのです。もし現代で土地の売却後に地中障害物が残っていることが発覚したら売主には瑕疵担保責任があり、損害賠償請求や契約解除となる可能性があります。
また、浄化槽や外溝などの撤去工事も別途費用がかかります。
一般的には解体工事を行う前に家屋の中は空にしておくものですが、何らかの事情で家具などの粗大ゴミが残っている場合、その残置物の処分費用が別途発生します。
その他にも防音性の高い養生シートを使用する場合などで追加料金が発生することがあります。
家屋調査とは解体工事を行う前に近隣の家屋について詳しくデータを取ることです。近隣住民に許可を得て建物内部までしっかりと調査し、壁や天井に亀裂がないか、柱や床は傾いていないかなど、細かな項目に沿って家屋の状態をチェックします。家屋調査は解体工事業者ではなく第三者の立場となる民間調査会社やコンサルタントに依頼します。家屋調査の相場は1軒あたり3～10万円程度です。
なぜ近隣の家屋調査をすることが重要なのか、それは解体工事を行った際に近隣住人とトラブルになるのを防ぐためです。解体工事を行う前の家屋の状態を事細かに記録しておけば「解体工事のせいで家の壁にひびが入った」などの苦情を入れられても本当に工事の影響だったのか、それとも工事前からその状態だったのかを見極めることができます。また万が一、工事の影響で近隣へ被害を出してしまった場合でも、責任を負う範囲について保険会社に証明できる証拠となります。
特に近隣家屋と近接しているようなケースでは損害賠償を支払うようなトラブルを避けるためにも、解体工事を行うにあたって家屋調査をしておくことは自分を守るために重要だといえるでしょう。
解体する家屋内に家具などを残さないよう事前に処分し、敷地内の雑草や庭木も可能なら処理しておきましょう。全てを解体業者に任せるのではなく、可能な限り自分と家族で整理をしておけば費用は抑えられます。
国としては解体工事の補助金制度はありませんが自治体によっては費用の一部を負担し、支援する制度が設けられている場合があります。事前申請で補助金を受けられるかもしれませんので自治体のホームページを確認し、手続きしておきましょう。
信頼できる解体業者選びも費用を安くに抑えるうえで大切です。悪質な業者の中には初期見積りを安く見せかけ、工事が始まってから多額の追加料金を請求するといったケースもあるからです。以下に解体業者選びのポイントをご紹介します。
・複数社に相見積もりを依頼して比較する
内容は明確で詳細に記載されているか、質問に丁寧に答えてくれるかなどを確認しましょう。
・信頼のおける不動産屋などに紹介してもらう
土地の売買を行う専門家は解体業者との繋がりも深く、信頼できる業者の情報も把握しているものです。
・解体費用がどれくらいになるか事前に相場を調べる
相場や付随工事などでどれくらいの費用がかかるのかを事前に調べておくことで、見積もり時にその費用が平均的かそうでないかの判断材料になります。
・必要な許可申請を取得、保険に加入しているかを確認
無許可で営業しているところや保険が切れているような業者が稀に存在します。可能であれば許可証等のコピーを確認させてもらいましょう。
・買主の負担を少なくできれば売却しやすくなる
買主にとって不動産購入後、いかに負担が少ないかが重要です。買主視点で考えると「建物の老朽化が進んでいる」「立地が悪い」などの場合においては事前に解体工事を行うのが良いといえます。老朽化が進んでいる建物ごと土地を売却しようとした場合、売却価格から建物の解体費用分の値引きを交渉される可能性もあります。リフォーム施工を実施して建物を残すことも可能ですが、買主がその内容を気に入らない場合は売れる見込みが低くなります。これらを鑑みると、売れる見込みが高くなるようであれば解体工事を実施して更地にするのが得策です。
・精神的な負担が軽減される
空き家を放置していると、空き巣や不法投棄・火事といった事件や事故が起こる可能性もあります。旧耐震基準の古い住宅は地震などの自然災害によって倒壊する危険性が高く、近隣住民に被害が及ぶことも否定できません。事故やトラブルを未然に防ぐためにも早めに解体工事を行っておくと、精神的な負担を軽減することができます。
・解体費用がかかる
建物の構造や広さなどの状況にもよりますが100万円以上かかるケースも少なくありません。
・固定資産税などの税金負担が増える
住宅が建つ土地は固定資産税が最大1/6になる優遇措置が取られます。更地にしてから土地の売却までに時間がかかってしまうと、税金負担はその分大きくなります。
・宅地としての販売ができなくなるケースも
現在の建築基準法に適合していない土地の場合、再建築不可となり今ある建物の解体後は住宅を建てられなくなります。この場合は建物のリフォームだけを行うほうが売却しやすいかもしれません。
解体工事費用はある程度高額なものですが「自分でできることはする」「自治体の補助金を利用する」など工夫次第で費用を抑えることも可能です。また悪質な業者に引っかかり不当な請求を受けたり、近隣トラブルから損害賠償を支払うようなことにならないためにも費用相場を把握し、家屋が近隣住宅と近接している場合は事前の家屋調査をしておくことが大切だといえるでしょう。
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